収入はこう変わります
いちばん不安になるのは「いくら減るのか」。まずそこから見ていきます。
※ 80%の期間は、夫婦ともに14日以上の育休を取った場合に付く上乗せ(出生後休業支援給付金)が入った状態です。ママは産後休業の終了後8週間以内、パパは子の出生後8週間以内に取るのが条件で、片方だけの取得では原則つきません。
※この記事は、勤務先の健康保険と雇用保険に加入している方を前提にしています。パートナーの扶養に入っている方や国民健康保険の方は、出産手当金と育児休業給付金の対象外です(出産育児一時金と妊婦のための支援給付は受けられます)。
産休・育休は「無収入になる期間」ではありません。給与が止まる代わりに、健康保険から出産手当金、雇用保険から育児休業給付金が出ます。しかも、この間は社会保険料が免除され、受け取る手当や給付金に所得税・住民税がかからないため、手取りで見ると額面の割合よりも目減りは小さくなります。
この記事では、産休に入る前から復帰までを時系列に追いながら、いつ・何が・いくら入るのかと、見落としやすい落とし穴を整理します。
01. 産休に入る前にやること
いつから産休に入り、育休をどのくらい取るのか。引き継ぎの都合があるので、安定期に入ったら早めに相談します。
多くは会社が手続きしますが、出産手当金の申請書には産院に書いてもらう欄があります。入院時に持っていけるよう、産休前に受け取っておきます。
産休・育休中の健康保険料と厚生年金保険料は免除されますが、会社から年金事務所への届出が必要です。自動では止まりません。
住民税だけは免除されません。給与天引きができなくなるため、納付書で自分で払う方式に切り替わるのが一般的です。会社に確認しておきます。
02. 産休中に入るお金
| 制度 | いくら | いつ | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 出産手当金 | 標準報酬日額の2/3 産前42日+産後56日のうち休んだ日数分 |
産後56日の経過後に申請 協会けんぽは受付から10営業日以内が目安 |
勤務先の健康保険 |
| 出産育児一時金 | 原則50万円 産科医療補償制度に未加入の 医療機関での出産や在胎22週未満は48.8万円 |
出産時 産院への支払いに充当 |
産院・健康保険 |
| 妊婦のための支援給付 2025年4月〜 |
5万円+5万円 2回目は胎児1人につき5万円 |
妊婦認定の申請後と 出産予定日の8週間前以降の 胎児数の届出後 |
市区町村 |
| 社会保険料の免除 | 健康保険・厚生年金が0円 本人負担・会社負担とも免除 |
産休期間中 月単位で判定 |
勤務先が届出 |
出産手当金はいくらになる?
計算のもとになるのは、出産手当金が出はじめる日より前12か月の「標準報酬月額」の平均です。これを30で割った「標準報酬日額」の3分の2が、1日あたりの金額になります。
社会保険の計算に使う等級で、通勤手当などは含みますが賞与は含みません。給与明細の健康保険料・厚生年金保険料の欄や、ねんきん定期便で確認できます。賞与の割合が大きい人は、年収に対する実際の置き換わり率が3分の2より低くなる点に注意してください。
健康保険の加入が12か月に満たない場合は、「加入してからの各月の平均」と「加入先の全被保険者の標準報酬月額の平均額」の低いほうで計算されます。転職直後や新卒で出産を迎える場合、上の計算例とは大きくずれることがあります。
産前の42日は出産予定日から数えます。実際の出産が予定日より遅れた場合、遅れた日数分も産前の支給対象に加算されます。逆に早く産まれた場合は、その分だけ産前の日数が短くなります。
03. 育休中に入るお金
産後休業(産後56日)が終わると、その翌日から育休に移り、お金の出どころが健康保険から雇用保険へ変わります。
育児休業給付金は「会社員なら誰でも」ではありません。原則として育休開始日前の2年間に、賃金支払の基礎日数が11日以上(または基礎時間が80時間以上)の月が12か月以上必要です。転職して間もない場合や、時短で入社した場合は要注意。産前休業の開始日を起点に判定できる特例もあるため、満たせるか不安なときは早めに勤務先かハローワークに確認してください。
金額のもとになるのは「休業開始時賃金日額」で、育休前6か月の賃金の合計を180で割った額です。こちらも賞与は含みません。
| 制度 | いくら | 期間 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 賃金の67% | 育休開始〜180日目 | 332,454円 支給日数30日の場合・2026年8月改定 |
| 育児休業給付金 | 賃金の50% | 181日目〜原則1歳 | 248,100円 支給日数30日の場合・2026年8月改定 |
| 出生後休業支援給付金 2025年4月〜 |
+13% 夫婦ともに14日以上の育休が条件 ママは産後休業の終了後8週間以内 パパは子の出生後8週間以内 |
育休の最初の 最大28日分 |
60,205円 2026年8月改定 |
| 社会保険料の免除 | 健康保険・厚生年金が0円 免除期間も年金額の計算上は 納めた期間として扱われます |
育休期間中 開始月〜終了日の翌日が属する月の前月 |
— |
1歳を過ぎても延長できる場合があります
保育所に入所できないなど一定の事情がある場合、育休と給付金は1歳6か月まで、さらに2歳まで延長できます。ただし自動では延びません。保育所の不承諾通知(入所保留通知)など、延長の理由を証明する書類が必要です。保育園の申し込みをしていないと、この書類自体が手に入らない点に注意してください。延長を見込んでいる場合も、申し込みは必ず行っておきます。
出産手当金は、休んだ日ごとにその翌日から2年。育児休業給付金の初回申請は、育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までです。会社任せにしていて失念されやすいので、産休前に手続きの担当者と進め方を確認しておくと安心です。
04. 見落としやすい3つの落とし穴
住民税は前年の所得に対してかかる税金です。産休・育休で今年の収入がゼロでも、去年働いていた分の住民税は納める必要があります。しかも給与天引きができなくなるため、納付書で自分で払う方式に切り替わるのが一般的です。納付書は例年6月ごろに届き、年4回に分けて支払います。金額がまとまって見えるので、心づもりをしておくと驚きません。
審査が遅いわけではありません。出産手当金は産後56日が過ぎてからまとめて申請するのが一般的だからです。協会けんぽは受け付けてから10営業日以内に支払うとしていますが、そもそも申請できるのが産後2か月近く経ってから。会社経由の手続きも挟むため、出産から入金までは3〜4か月かかることもあります。育児休業給付金の初回振込も、育休開始から2〜3か月後になることがあります。つまり産休に入ってから最初の入金まで、数か月の空白ができます。産休前に生活費を確保しておくことが、いちばん現実的な備えです。産前分と産後分を分けて申請できる場合もあるので、早く受け取りたいときは加入先に相談してみてください。
産休・育休中の保険料免除は、会社から年金事務所への届出があって初めて適用されます。産休に入る前に、会社の担当部署に手続きの予定を確認しておきましょう。あわせて、育休を延長したときは延長の届出も必要です。
05. 復帰に向けて知っておくこと
時短勤務にするなら給付金があります
2025年4月に育児時短就業給付金が新設されました。2歳未満の子を育てながら時短勤務をする場合、時短中に支払われた賃金の原則10%が支給されます。「時短で給料は減るけれど、その一部を国が補う」という制度です。
※支給限度額:1か月の賃金が484,121円以上の場合は給付の対象外(2026年8月改定)。賃金と給付金の合計がこの額を超える場合は、超えた分が減額されます。
時短にするなら、忘れてはいけない届出が2つ
どちらも申し出ないと適用されません。落とし穴3と同じ構造です。
- 育児休業等終了時改定…復帰後に給与が下がったとき、復帰から3か月の報酬をもとに4か月目から社会保険料を下げられる手続きです。これをしないと、下がった給与のまま高い保険料を払い続けることになります。
- 養育期間標準報酬月額特例…3歳未満の子を育てている間は、給与が下がる前の標準報酬月額で将来の年金額を計算してもらえる制度です。保険料は下がったまま、年金額だけ据え置きという、申し出ないと損しかない手続きです。さかのぼれるのは申出日の前月から2年までなので、早めに。
配偶者控除が使える年があります
育休で年収が下がった年は、パートナー側の配偶者控除・配偶者特別控除の対象になることがあります。出産手当金や育児休業給付金は非課税なので、この判定に使う所得には含まれません。そのぶん該当しやすくなります。自動では適用されないため、パートナーの年末調整か確定申告での申告が必要です。
※所得の基準額とパートナー側の所得制限は年分によって変わります。申告の前に国税庁のページで、その年の基準をご確認ください。
配偶者控除は税金の話です。産休・育休中も自分が勤務先の健康保険の被保険者であることは変わらないため、パートナーの健康保険の扶養に入るわけではありません。混同しやすいところなので、分けて考えてください。
出産費用が高くついた年は医療費控除も
帝王切開や吸引分娩などで自己負担が増えた年は、医療費控除の対象になることがあります。受け取った出産育児一時金は差し引いて計算します。手当や給付金が非課税だからといって確定申告が不要とは限らないので、医療費の領収書は年内分をまとめて取っておきましょう。
認可保育園の申し込みは、多くの自治体で入園前年の秋。育休中に見学と申請を済ませる流れになります。申込時期も必要書類も自治体ごとに違うので、育休に入ったら早めにお住まいの自治体のスケジュールを確認しておきましょう。
よくある質問
産休はいつから取れますか?
出産手当金はいくらもらえますか?
産休・育休中は住民税も免除されますか?
お金はいつから振り込まれますか?
育休中に働いたら給付金はもらえなくなりますか?
出産手当金と育児休業給付金は同時にもらえますか?
まとめ:この3つだけ覚えておけば大丈夫
社会保険料の免除と非課税があるため、育休の前半までは手取りで8割前後。ただし181日目から50%に下がり、賞与も止まるので、後半は目減りがはっきり出ます。
前年の所得にかかるため、収入がない期間も納付が必要。納付書は6月ごろに届きます。
初回振込までの空白は数か月。産休前に生活費を確保しておくのが、いちばん効く備えです。
参考にした公的な情報
- 厚生労働省:育児休業等給付について
- 厚生労働省:育児・介護休業法について
- こども家庭庁:妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付
- 厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト:産前・産後の休業について
- 協会けんぽ:健康保険出産手当金支給申請書
- 日本年金機構:厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)
- 日本年金機構:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
- 国税庁:配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
※この記事は2026年10月時点の情報をもとに、筆者が実際に手続きした経験を加えてまとめたものです。金額・期間・必要書類は、加入している健康保険や勤務先の規定、お住まいの自治体によって異なる場合があります。手続きの前に必ず各窓口で最新の内容をご確認ください。

コメント